2011


「内庭」 F15 キャンバスに油彩 「内庭」 (個人蔵)
 しゃくなげの花を画面いっぱいに描き、背景をなくしてしまった絵の一つです。絵画の構成における背景って何だろう?と考えていた時、描きたいもので画面をうめてしまいたい、という考えに至り、そこから引き出された構図です。画面上に不要なものはない、という考えと、肝心なものは大きく描こうと。この絵は特に、花の構造もあいまいに見えるくらい、少し抽象的な感じで描きたかったのです。心の中のように、まだかたまらない何か、というような感じで。 
また、同じイメージの絵を2枚描く事はほとんどないのですが、この絵は特別でF15号の個展で発表したこの作品のほかに、横10センチくらいの本当に小さい絵を1枚、その前に描きました。
「風のはじまり」 S10 キャンバスに油彩 「風のはじまり」 (個人蔵)
 風は空気を動かしてくれる。小さい頃、台風も好きでした。(学校は休みになるし!)。強い風は、いらない事をぜんぶ吹き飛ばしてくれるようで爽快です。急に風が吹くのは、何かの意思のようで、思い出すべき事がなかったか第六感に
聞きます。優しく肌をなでるそよ風は、過去や未来を想起させます。そんな風の始まる場所、って何処なんだろう。どこではじまって、どこに行くんだろうか。不確かだけど、ある、物ではなく動き、変化。物に作用する力。
 そして、ラナンキュラスはすこしづつ開きます。硬く閉ざしていた蕾をふくらませ、やわらげ、幾重にも重なる薄い花びらをゆっくりとほどきながら。そんな小さいけれど力強い動きや熱のようなものが風のはじまり、だったらいいなぁと。

「陽光」 F6 キャンバスに油彩 「陽光」 (個人蔵)
 大震災の次の日、花を買いに行きました。 花屋に、太陽みたいに咲く優しく暖かい色調のダリアがありました。
 悲しくても立ち上がるし、楽しいときは心から楽しむあの人に、ぴったりの花だと思い購入しました。
 しっかりとその生を生きている人のことを想うと、、それまでに知った、その人の一挙一動が私の心をあたため勇気づけます。そんな 人、ひいては本や音楽、絵や写真、映像などの表現、また、植物や、動物、景色など自然からの力。
「そのままで」 F3 キャンバスに油彩 「そのままで」 (個人蔵)
 2010年から2011年にかけて、優しい絵が描きたいと思っていました。痛みや苦しみとしっかり向き合った末の優しさのようなもの、絶望から立ち上がる瞬間のような事。あるいはなんで優しくできなくなってしまうんだろう、といった気持ちから。現実生活で、うまくできなかった事を、絵画でやってみるなんて、おかしな話に聞こえるかも知れませんが、一日の多くの時間を絵画制作に費やしていれば、描く事が生活の主要な部分となり、それなら、こうありたいと思い描く、ことを描くことは、一個人の形成には有効なのではないかと思います。無理に優しくするのではなく、タイトルにあるように、そのままで、いいのに、構えないで大丈夫なのにという気持ちとか。

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